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ホーム > 気象等の知識 > 地震・津波 > 津波警報・注意報の改善に関する最近の取り組み

津波警報・注意報の改善に関する最近の取り組み

平成18年10月 2日〜
緊急地震速報を活用した津波警報・注意報の迅速化

平成19年 7月 2日〜
地震のメカニズムを活用した、津波警報・注意報の切替・解除

平成19年11月28日〜
津波予報データベースの改良

平成20年7月1日〜
津波観測値発表地点の増強

緊急地震速報を活用した津波警報・注意報の迅速化

 気象庁は津波警報・注意報を3分程度で発表することを目標としてきましたが、平成18年10月より、 緊急地震速報の技術を活用することにより、 津波警報・注意報をより早く発表することができるようになりました。 ただし、緊急地震速報で十分な精度の震源とマグニチュードが得られた場合に、これらを活用することになります。

緊急地震速報の仕組み

緊急地震速報を活用した津波警報・注意報の流れ

 平成19年3月25日に発生した「平成19年(2007年)能登半島地震」 の際には、実際に緊急地震速報の技術を用い、地震発生から1分40秒程度で津波注意報を発表することができました。

能登半島地震の際に発表した津波注意報

地震のメカニズムを活用した、津波警報・注意報の切替・解除

 気象庁は、数値シミュレーションによる津波予測結果を保存したデータベースを、津波警報・注意報の発表に活用しています(津波を予測するしくみ)。 このシミュレーションは、地震による断層を全て傾斜角45°の逆断層と仮定して計算を行っています。 地震が発生した際には、その計算結果をデータベースから検索し、迅速な津波警報・注意報の発表を実現しています。

 しかし、実際には、地震による断層は全て傾斜角45°の逆断層とは限りません。 地震の発生メカニズムが異なると、マグニチュードが同じであっても、発生する津波の大きさは変わります。 また、メカニズムが横ずれだった場合は、津波を起こしにくいとされています。

地震のメカニズムと津波の関係

 気象庁では、平成19年7月より、短時間でCMT解を計算することにより、 地震のメカニズムと規模(モーメントマグニチュード)を地震発生後10〜20分程度で推定しています。 モーメントマグニチュード(Mw)とは、地震による断層運動の大きさを的確に表すマグニチュードです。 最初の津波警報・注意報は、地震発生後2〜3分で発表する必要があるので、気象庁マグニチュード計算式を使って推定した地震の規模に基づいています。 最初の警報・注意報の発表後、地震発生メカニズム及びMwによって、 これまでよりも早いタイミングで、津波警報・注意報の切替や解除を行うことができるようになりました。

 以下では、地震のメカニズムやMwを用いた津波警報・注意報の切替や解除について解説します。

<地震発生メカニズムに応じた切替・解除>

 平成17年3月20日に発生した福岡県西方沖の地震はマグニチュード7.0と推定され、気象庁は、津波注意報を発表しました。 しかし実際には、津波は観測されませんでした。 後の調査により、この地震による断層は横ずれであったことが分かりました。

 現在では、地震発生後10〜20分で地震発生メカニズムが分かるようになりました。 これにより、断層が横ずれであると判明した場合には、津波の予測をやり直すことが必要になります。 このため、横ずれ断層に対応したシミュレーションも実施し、その結果をデータベースに追加してあります。

 具体的には、地震が発生し津波警報又は注意報を発表したが、断層が横ずれと判明し、津波の到達予想時刻まで待っても津波が観測されない場合には、警報・注意報を速やかに解除します。 あるいは、横ずれ断層と判明した場合で、津波が観測されたが予想された高さに比べて小さい場合には、横ずれ断層に対応したデータベースによる津波予測を行い、 その結果を利用して津波注意報への切替や解除を行います。

地震発生メカニズムに応じた切替・解除

 実際に横ずれ断層と判明した場合の津波注意報の解除の流れについて、平成17年3月20日の福岡県西方沖の地震を例に、見てみましょう。 赤枠で囲まれたものが、地震発生メカニズムを考慮した場合に、従来の手順より変更される箇所です。 このケースでは、約20分早く注意報の解除が可能になると考えられます。

実際に地震発生メカニズムに応じた切替・解除を行った事例(平成17年3月20日の福岡県西方沖の地震)



<モーメントマグニチュード(Mw)を活用した切替・解除>

 地震は、断層面を境に両側の岩盤がずれ動く現象です。 地震の大きさは、断層の面積(S)とずれの量(D)の積に比例します。 この積に剛性率(岩盤の堅さを示すもの)をかけたものを地震モーメントといいます。 この地震モーメントを基にしたマグニチュードをモーメントマグニチュード(Mw)といいます。 Mwは断層運動の規模を表す指標といえます。 津波は断層運動によって発生するため、Mwを用いて予測を行ったほうが、 通常のマグニチュードを使用するよりも、発生する津波の規模を正確に見積もることが可能と考えられるのです。 また、Mwは長い周期の地震波を用いて計算されますので、通常のマグニチュードの割に大きな津波を伴う「津波地震」のマグニチュードの推定にも有効と考えられます。

Mwと断層面の大きさの関係

 実際にMwを使った津波警報・注意報の切替や解除の手順について説明します。 Mwが、先に発表した警報・注意報で用いたマグニチュードの値よりも小さく、かつ、Mwが6.4以下になったときは、 津波データベースを用いて津波予測の再評価を行い、その結果として注意報にならないと予想された場合には、津波注意報を解除します。 Mwが、先に求めたマグニチュードよりも大きく、長周期が卓越しているような場合(この場合は、津波地震であることが疑われます。)にも、 データベースによる再評価を行い、警報や注意報に切り上げられる予報区があれば、津波警報・注意報の切替を行います。

Mwを使った津波警報・注意報の切替や解除の手順



<津波地震とは>

 マグニチュードから予想された規模より大きな津波を発生させる地震は、しばしば、「津波地震」と呼ばれます。 明治29年に三陸沖で発生した地震では、人々はたいした揺れを感じなかったのですが、明治三陸津波と言われる甚大な津波被害をもたらしました。 この地震は、津波地震だったと考えられています。 津波地震は、断層がゆっくり滑ることによって起こるため周期の長い地震波が卓越すると考えられています。 Mwを推定するためには、通常のマグニチュードを推定する場合に比べ、周期の長い地震波を用いて解析を行うので、津波地震のような地震の規模を推定するのに有効と考えられます。

津波予報データベースの改良

 気象庁は、数値シミュレーションによる津波予測結果を警報・注意報の発表に活用しています(津波を予測するしくみ)。 平成19年11月、このシミュレーションで用いる津波予測モデルを改善し、その計算結果を津波予報データベースに収録しました。

 具体的には、以下の改善を行いました。

@

海底摩擦によって津波が減衰する効果を組み込み、津波の伝播過程をより正確に計算
A

計算格子間隔2〜4kmであったものを、緯経度1分(約1.5km)間隔に細分化し、より細かな海底地形に対応
B

予測地点を沿岸に近づけることで、沿岸における津波の高さの予測精度が向上

<過去の津波事例で改善効果を検証>

 沿岸での津波の高さの予測精度(観測値と予測値との差)について、過去に発生した津波で検証したところ、 2006年11月15日の千島列島東方の地震では38%、「昭和58年(1983年)日本海中部地震」では15%改善されました。

 「昭和58年(1983年)日本海中部地震」では、旧データベースでは、北海道日本海沿岸南部、佐渡及び隠岐の予報区には3m程度以上の津波が予想されます。 しかし、これらの沿岸での実際の津波記録は、1m程度でした。 新データベースによる検索結果を用いれば、津波警報を発表した予報区では、1m又は2m程度の津波を予想することになり、実際の観測と合致します。]

新データベースと旧データベースの比較


津波観測値発表地点の増強

 気象庁、国土交通省港湾局、国土交通省河川局、海上保安庁、国土地理院がそれぞれ管理している検潮所の潮位記録 がリアルタイムで共有できるようになったことから、平成20年7月1日に、津波の観測値を発表する検潮所の数 を、これまでの107 ヶ所から163 ヶ所に増やしました(図1)。津波は、沿岸の地形や水深の違いにより、距 離がわずかに離れても高さが大きく異なることがあります。観測地点が増えることにより、きめ細かな情報の 提供ができるようになります。

津波観測情報で津波の観測値を発表する検潮所の場所。赤印が平成20年7月1日以降に追加された地点を示す。青丸は従来の発表地点
図1 津波観測情報で津波の観測値を発表する場所(平成21年9月1日現在)。赤の地点は、平成20年7月1日以降に津波情報に活用を開始した地点。

 また、国土交通省港湾局が設置した宮城県金華山沖と岩手県釜石沖のGPS 波浪計のデータの津波情報への活用 も平成20年7月1日から開始しました。さらに平成21年4月1日からは、青森八戸沖、岩手宮古沖、気仙沼広田湾沖、 三重尾鷲沖、和歌山白浜沖および高知足摺岬沖の6ヶ所を加え、平成21年9月1日現在計8ヶ所のGPS波浪計を津波情報 に活用しています。GPS 波浪計(写真)とは、GPS 衛星を用いて沖に浮かべたブイ(GPS 波浪計)の上下変動を計測し、 波浪や潮位をリアルタイムで観測する機器です。国土交通省港湾局が、港湾整備に必要な沖合波浪情報を得る目的で 設置と観測を行っています。GPS 波浪計は波浪の他に津波の観測も可能な観測機器です。

 GPS 波浪計は沿岸から15km〜20km の沖合に設置されていることから、沿岸に津波が到達する前に津波を検 知できると期待されています。気象庁では、GPS 波浪計で津波が観測された場合には、速やかに津波情報を発 表することとしています。ただし、津波が伝わって来る方向によっては、GPS 波浪計で津波が観測されるよ り前に津波が到達する場所がある場合もあります。

岩手県釜石沖のGPS 波浪計(写真提供:国土交通省東北地方整備局)
岩手県釜石沖のGPS波浪計(写真提供:国土交通省東北地方整備局)

 また、一般に津波は沖合では小さく、沿岸に近づくにつれて高さが高くなります。GPS 波浪計で観測され た沖合の高さだけを見ると津波が小さいと誤解される恐れがありますので、津波情報では沖合での津波の高 さとともに沿岸での高さの推定値も発表します。GPS波浪計の情報については、このような津波の特性に留 意して発表するようにしています。 (GPS波浪計で津波が観測された際の津波情報に関する留意事項)

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